【消防士2名死亡】大阪・道頓堀ビル火災から学ぶべき消防法の大切さ

2025年8月18日、大阪市中央区道頓堀のビルにて、懸命に消火活動にあたっていた消防隊員2名の尊い命が失われた痛ましい火災事故が起きました。

殉職した消防隊員は55歳の小隊長と22歳の隊員。まだこれから長い人生を送れるはずであった2名が帰らぬ人となった火災事故ということもあり、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

このビル火災においては、重大な消防法令違反があったとして問題視されています。

消防法においては、ビルのオーナーや建物管理者が法令違反を認識しているにもかかわらず、コスト面などから後回しにしているケースが少なくありません。

コストがかかるから、面倒だから、時間を割きたくないからなどといった理由で怠っていると今回のように尊い命を失う恐れがあります。

この記事では、ビル火災から学ぶべき消防法の大切さなどについて解説します。

目次

道頓堀火災の背景とは

今回の火災は、道頓堀川沿いに建っている6階建てと7階建ての2棟のビルにまたがって発生しています。

1968年に竣工した鉄筋コンクリート造りの2棟となっており、東側のビルは地下1階と地上7階建て、西側は地下1階と地上6階という構造です。

また、4階は非常口として火元とみられているビルから移動もできるようになっています。

詳しい出火原因等はまだ明らかにされていませんが、西側ビルの1階にある室外機周辺から焦げ臭い匂いがしたという目撃者もおり、ここから出火した後に外壁広告に燃え移り延焼したとみられています。

なお、殉職した2名を含む消防隊員は5階部分で消防活動を行っていました。

活動中に天井部分が崩落ししたため、消防隊員は二手に分かれて避難を開始。

1組は無事に出口にたどり着けたものの、残りの2名は避難経路を見つけられずに6階に避難しましたが、その後酸素が足りなくなり窒息によって死亡したと発表がありました。

火災の通報を受けてから約20分後である10時10分頃が死亡推定時刻とされています。

2023年に6つの消防法令違反を指摘されていた

火災が起きたビルに関しては、2023年に以下を含む6項目において消防法令違反が指摘されていました。

  • 年2回以上の消火及び避難訓練
  • 非常口の解除方法の表示
  • 火災報知器の設置場所が不適切かつ数が少ない
  • 避難経路の点検がされていない

なお、指摘後に改善されたのは6項目のうち一部のみだったとされています。

指摘された6項目が今回の出火に直結したとは定かにされていませんが、利用者が安全にビルを利用するためには消防設備の不備があること自体が非常に危険であると認識しなければなりません。

何か1項目でも消防法令違反があれば、有事の際に利用者の人命を失うリスクが高まると認識しておきましょう。

特定一階段等防火対象物の危険性

消防隊員2名が亡くなったビルは、特定一階段等防火対象物(通称:特一(とくいち))であったと報告されています。

特定一階段等防火対象物とは?

地下及び3階以上のフロアに飲食店など不特定多数の利用者がいる、直通階段が屋内に1つしかない建築物のこと

引用:「直通階段が一つの建築物向けの避難行動に関するガイドライン」に係るリーフレット | 火災予防等 | 総務省消防庁

特定一階段等防火対象物は、ホテルや飲食店、カラオケボックス、病院、商業施設など不特定多数の人が有事の際に逃げ道を失い命を落とす可能性が高い建物となっています。

今回亡くなった2名の消防隊員のケースも、ビル5階部分で活動しているときに天井部分が崩落し、避難経路を失っています。

6階に避難をしたものの、呼吸が困難になり亡くなったと見られているのです。

このように、避難経路が建物内に1つしかない特定一階段等防火対象物では、逃げ道を失って人命が失われる可能性が高まります。

なお、2つ以上の避難経路がある建物であれば火災が起きた際に避難がしやすくなるため、特定一階段等防火対象物は安全性向上のための改修を求められる場合があります。

引用:「直通階段が一つの建築物向けの避難行動に関するガイドライン」に係るリーフレット | 火災予防等 | 総務省消防庁

忘れてはいけない過去の重大な火災事故

過去には、多くの尊い命が失われた火災事故が発生しています。

【千日デパート火災】

1972年(昭和47年)5月13日

大阪府大阪市中央区千日前二丁目

死者118人、負傷者81人と多くの被害者が出た、日本史上最大のビル火災として度々テレビ番組などでも取り上げられています。

【大洋デパート火災】

1973年(昭和48年)11月29日

熊本県熊本市中央区下通1丁目3番10号

104人が死亡した火災事故。火元になった2階階段部分では消火器の使い方が分からず初期消火に失敗。119番通報などの訓練もされておらず、多くの被害者が出てしまいました。

【ホテルニュージャパン火災】

1982年(昭和57年)2月8日

東京都千代田区永田町2丁目

宿泊客33人(外国人22人を含む)の命が失われた火災事故です。千日デパートと大洋デパートの火災によって義務付けられた、自動火災報知設備やスプリンクラーの設置、内装を不燃性のものと交換するなどの指導を消防庁から何度も受けていました。しかし、ホテル社長は、「コストがかかる」という理由から予算を削り設置業者との契約も切ります。

その結果、火災が起きても自動火災報知機が故障によって鳴らず宿泊客は逃げ遅れることになりました。

ホテル社長と支配人が業務上過失致死罪で起訴。いずれも有罪判決を受けています。

千日デパート火災と大洋デパート火災は、消防法令や建築基準法の改正と施行のきっかけにもなっています。

このような火災事故を起こさないために、起こってしまっても安全に避難できるようにと、施行されたのが消防法や建築基準法です。

それにもかかわらず消防法や建築基準法を軽視し怠ると、今回のような悲惨な事態を招くと深く理解しなければなりません

過去の火災事故と認識するのではなく、いつ起こってもおかしくない火災事故であると、自分事に捉えて適切に消防設備を整えておくことが大切です。

上記の火災事故では直接的な火災の原因とは別に、建物や従業員などの問題として以下のことが挙げられています。

  • 手動式非常ベルの操作法を知らなかった
  • 屋内消火栓の設置場所を知らなかった
  • 火災時の通報連絡や初期消火のための体制も整備されていなかった
  • 屋内消火栓設備の起動ボタンが作動しなかった
  • 従業員による消防訓練や避難訓練が未実施だった
  • スプリンクラーの設置が不十分だった
  • 防炎性能のないカーテンなどが使用されていた
  • 外国人観光客への伝達が不十分だった
  • 防火戸の維持管理が不十分で閉鎖できなかった場所があった
  • 窓の前にロッカーがあり開けることができなかった
  • 防火扉の前に看板が置かれていたが非常口の誘導灯は設置されていた
  • 消防設備の指摘を受けていたにもかかわらず「改善した」と虚偽の報告書を提出していた

上記以外にも、さまざまな問題点が後日指摘されています。

消防法を守ることは人命を守ることにつながる

過去の火災事故もこれからの火災事故も、消防設備を整え日頃から有事を想定した避難訓練等を怠らないことが人命を守ることに直結してきます。

  • 消防点検とか面倒
  • コストかけてまで消防点検はやる必要ない
  • 特に消防から指摘されていないからやらない
  • あの施設も消防点検やっていないから弊社もやらない
  • 消防から指摘されてから動けばいいでしょ?
  • 今まで火災なんて起きていないし、これからも起きない自信がある!

このような考えで消防法を無視し消防点検などを怠っていると、想像している以上の大きな火災事故に繋がる可能性があります。

失われた命は戻ってきません。

施設を運営する以上、利用者の命を守ることは事業者が行うべき最低限の義務です。

消火器の場所や使い方は把握していますか?

非常口はどこですか?施設利用者にも説明できますか?

確実な避難経路は確保できていますか?

火災報知器やスプリンクラーなどの消防設備は故障していませんか?

まずは、施設の現状を把握するためにも消防設備点検を行ってください。

WILLPROCEEDでは、消防設備に関するご相談にも対応しております。

少しでも不安なこと、心配なこと、気になることなどあればいつでもご連絡くださいね。

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株式会社WILLPROCEEDのWEB担当者。
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